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カンヌ映画祭オープニング作品『ブラインドネス』出演・伊勢谷友介
フェルナンドは僕のヒーロー!

2008/05/19

カンヌ映画祭は「大事なターニング・ポイント」

 伊勢谷友介にとって、カンヌ映画祭は「大事なターニング・ポイント」なのだとか。

 「カンヌに来ている時は、大事な出会いや経験をさせていただいているという実感がありますね。その経験が、改めて僕自身が作品を作る時のスタンスにも参考になっているというのか。とてもありがたい……こう言うとすごく日本人っぽいですが(笑)」

 前回は、伊勢谷を俳優道へと導いた是枝裕和監督の『DISTANCE/ディスタンス』で2001年に。そして今回は、フェルナンド・メイレレス監督の『ブラインドネス』。日本人監督または出演者の作品がオープニングを飾るのは、18年ぶりというマスコミの騒ぎっぷりもどこ吹く風!? 伊勢谷本人にとっては、メイレレス監督の作品に参加できた喜びの方が大きいようだ。

 「レッド・カーペットは前回も歩きましたし、今回なんて(主演の)ジュリアン・ムーアさえいれば、後(の出演者)は記念碑的なものですから(笑)。そんなに求められてもいないので、緊張もしませんよね。そんなことよりも、メイレレス監督の作品が三大映画祭のひとつに認められたこと、コンペティション部門にも出品され、オープニング作品として上映されたという、映画として最上級のもてなしを受けたことが僕はとても嬉しかったんです」

 オーディションを経ての、本作への出演。「作家としてリスペクトする、メイレレス監督と一緒に仕事がしたかった」という強い想いが伊勢谷を駆り立てた。

 「『シティ・オブ・ゴッド』を観た時、ビジュアルの斬新さやブラジル文化の再発見という外側からの要素と、ブラジルのリアルな状況を映画で伝えることで、何とかこの社会を助けたいという内側からの想い、このふたつをきちんと両立させている、すごい方だと思いました。オーディションの時にメイレレス監督と初めてお会いしたんですが、明るくて優しくて、まるで気取らない方で。本作の撮影が終わるまで、リラックスを提供して下さいました。出演が決まった時は、希望が与えられたようで、本当に舞い上がりましたね(笑)」

監督の社会的な視点が、いちばん強く出ている

 1998年ノーベル文学賞を受賞した、ジョゼ・サラマーゴの「白の闇」を原作にした本作。視界が真っ白になる奇病が伝染する中、生き残ろうとする人間たちが本性をむき出しにする姿が描かれてゆく。

 「僕ら自身、今、実際は見えていますけど、本当の意味で社会というものが見えている人ってごく限られていると思うんですね。人間ってどこかそういう目を持つべき時期に来ていると思うのですが、ちゃんとそこに気づかせてくれる作品というのかな。社会をもう一回考えてみよう、再構築してみようという作業をこの映画はしていたと思います。そういう意味では、監督の持つ社会的な視点がこれまでの作品の中でもいちばん強く出ている作品じゃないでしょうか。ただ楽しいだけじゃなく、きちんと問題提起をし、観て下さった方の中にある種の足跡を残す作品に完成していると思います。フェルナンドは僕のヒーローですね。僕、生まれて初めて、フェルナンド・メイレレスになりたい! と思いましたもん(笑)。心底惚れてますから!! 」

 監督はもちろん、共演者たちとの出会いも大きかったと語る。

 「監督のリベラルさもめちゃくちゃカッコ良かったのですが、共演者たちもみんな、お互いをひとつの作品を作るために集まった仲間のひとりとして、平等に在る現場でした。わかりやすくヒットする類の映画ではないのに、ジュリアンの作品への熱い想いは現場ですごく伝わってきたし。マーク・ラファロの微妙な表情の変化なんて、心から来ているとしか思えない。映画を観てそれを感じた時には、鳥肌が立ちました! 作中、 ガエル・ガルシア・ベルナルが歌うシーンがあるんですが、あそこは彼のアドリブから生まれたシーンなんです。現場でもすごくいいアイデアだと思ったし、そういうことがやれちゃうガエルの度胸、監督のイメージを越えていく役者としての才能を素晴らしいとリスペクトしました。僕と木村佳乃さんが演じた日本人夫婦の芝居も、現場で作っていった感じでした。まず監督に『どうしたい?』と訊かれ、そこから日本語のセリフを僕が考えました。フェルナンドが『友介、脚本家になれるよ!』と喜んでくれて。“僕、もう書いてるんだけどなぁ……”なんて思いながらも、認められて嬉しくて(笑)。監督のキャパシティの広さにまた惚れてしまって……。とにかく作品作りの上で、大事なものを大事にできた現場で、そこに居られたことが幸せでした」

“水を得た魚”のように

 ポジティブに意見交換をしようとする姿勢から、メイレレス監督にイタリア人だと言われたと笑う伊勢谷。しかしそれは、クリエイターにとって最も大事な資質ではなかろうか。『パッセンジャー』での経験も踏まえて、伊勢谷は日本人の海外進出についてどう考えているのか。

 「今回のように、海外に行けばどの現場も得ることが多いとは限らないとは思います。ただ日本国内に限らず、海外へと視野を広げ、いろんな作品に出ることは、もう少し進んだことができるんじゃないかと、僕自身はポジティブに考えています。しがらみのない場所で、自由に自分を出していくことは、ひとりの人間としても成長させてくれるような気もします。ひとりの人間として、意見を言い、意見交換をすることで、お互いにアドバイスをし合い、助け合おうと思う。そういう自由な作り方こそが、個人のプライドなんかよりももっと大事な、クリエイティビティに繋がっていくんじゃないのかな。ある程度意思のある人間なら、その場合、英語はできたほうが辛くはないでしょうけど(笑)。『ブラインドレス』の現場で僕は、まさに“水を得た魚”のように楽しんでいましたから!」

伊勢谷友介

1971年東京生まれ。東京藝術大学美術学部修士課程修了。98年、在学中に『ワンダフルライフ』でスクリーン・デビュー。同年、ニューヨーク大学映画コースに短期留学、映画制作を学ぶ。以降、『DISTANCE/ディスタンス』『CASSHERN』などに出演。03年には、監督、脚本、主演を務めた『カクト』を発表し、第32回ロッテルダム国際映画祭に正式出品される。近作に、『雪に願うこと』『ハチミツとクローバー』などがある。

『ブラインドネス』
●2008年11月日本公開。配給:ギャガ・コミュニケーションズ

photographs by Kazuko Wakayama



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