
ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
不況の結果は必ずしも悪いことばかりではない
今、ほとんどの人の頭にある疑問はこういうことだろう。「一体どこまでひどくなるのか?」
NBCユニバーサルは先週、明確な信号を送った。2009年の予算を5億ドル削減すると発表したのだ。パラマウントは作品の公開スケジュールを急に変更し、その他のスタジオも一斉射撃を始めることは目に見えている。不況が進むにつれ、今後数カ月のうちに失業率が増え、給与の削減が行われるだろう。
これまでにも我々は不況を生き延びてきた。しかし、今回のはどういうわけか、より不吉な感じがする。そのひとつは、世界的に起こっているということだろう。小さな島でさえ、金がないという状態だ。
さらに、誰もコントロールしている者がいないということもある。歴史家は、ブッシュ政権の終盤の成績に「無政府状態」(Anarchy)の “A”を烙印してくれることだろう。経済はゴールドマン・サックス(注:世界最大級の投資銀行)の能無し集団によって動かされている。彼らは自分のボーナスを増やすために仕事をしているのであって、財政的方針を熟考することは頭にない。
当然のことながら、エンタテインメント業界の大手企業のCEOたちは、自分たちのビジネスモデルに自信がない。現在の状況下で、このままの方針を貫くか、反対に何か根本的な——つまり宇宙的な——変更を検討した方がいいのだろうか?
現代の者たちは抜本的な改革が何を引き起こすか想像し難いのだろう。しかし私にしてみれば、少なくとも一度は、面白い前例となる時代を生き抜いてきている。
私がパラマウント・ピクチャーズの重役だった時、経済が突然悪化したことがあった。そして我が社は考えもしないようなことをする決断を下した。企業の命令は “削減(lean)と切り詰め(mean)”だった。方針としては私にもわかる。私はすでに痩せて(lean)いたし、スタジオで働き始めた当初から、嫌なヤツ(mean)になっていたのだ。
しかし、具体的にはこういうことだった。パラマウントの全製作チームはスタジオから出てビバリーヒルズのキャノン・ドライブという通りに構えた新本社に移動する。
そして “チーム”とも言えない、4人のクリエイティブ “グループ”が構成され、そのグループはビジネスに3つ、ポストプロダクションに2つ配置された。かつては立派な劇場と3つの試写室をほこっていたのに、今では20席ほどの小さな試写室が1つ、という状態だった。
この “新パラマウント”は、企画されている作品を進行する——年間約15作品も——のだが、製作費は少なく、契約条件もより厳しい。そして、おいしい付加特典を楽しむスタジオ・ライフの時代も終わった。パラマウント映画に出演するスターがロサンゼルス空港に着いても、迎えのリムジンはない。本人が自腹で雇わない限り。
NBCユニバーサルは先週、明確な信号を送った。2009年の予算を5億ドル削減すると発表したのだ。パラマウントは作品の公開スケジュールを急に変更し、その他のスタジオも一斉射撃を始めることは目に見えている。不況が進むにつれ、今後数カ月のうちに失業率が増え、給与の削減が行われるだろう。
これまでにも我々は不況を生き延びてきた。しかし、今回のはどういうわけか、より不吉な感じがする。そのひとつは、世界的に起こっているということだろう。小さな島でさえ、金がないという状態だ。
さらに、誰もコントロールしている者がいないということもある。歴史家は、ブッシュ政権の終盤の成績に「無政府状態」(Anarchy)の “A”を烙印してくれることだろう。経済はゴールドマン・サックス(注:世界最大級の投資銀行)の能無し集団によって動かされている。彼らは自分のボーナスを増やすために仕事をしているのであって、財政的方針を熟考することは頭にない。
当然のことながら、エンタテインメント業界の大手企業のCEOたちは、自分たちのビジネスモデルに自信がない。現在の状況下で、このままの方針を貫くか、反対に何か根本的な——つまり宇宙的な——変更を検討した方がいいのだろうか?
現代の者たちは抜本的な改革が何を引き起こすか想像し難いのだろう。しかし私にしてみれば、少なくとも一度は、面白い前例となる時代を生き抜いてきている。
私がパラマウント・ピクチャーズの重役だった時、経済が突然悪化したことがあった。そして我が社は考えもしないようなことをする決断を下した。企業の命令は “削減(lean)と切り詰め(mean)”だった。方針としては私にもわかる。私はすでに痩せて(lean)いたし、スタジオで働き始めた当初から、嫌なヤツ(mean)になっていたのだ。
しかし、具体的にはこういうことだった。パラマウントの全製作チームはスタジオから出てビバリーヒルズのキャノン・ドライブという通りに構えた新本社に移動する。
そして “チーム”とも言えない、4人のクリエイティブ “グループ”が構成され、そのグループはビジネスに3つ、ポストプロダクションに2つ配置された。かつては立派な劇場と3つの試写室をほこっていたのに、今では20席ほどの小さな試写室が1つ、という状態だった。
この “新パラマウント”は、企画されている作品を進行する——年間約15作品も——のだが、製作費は少なく、契約条件もより厳しい。そして、おいしい付加特典を楽しむスタジオ・ライフの時代も終わった。パラマウント映画に出演するスターがロサンゼルス空港に着いても、迎えのリムジンはない。本人が自腹で雇わない限り。
そうして、驚きの結末はこうだ。スタジオを出たあと、我が社の映画には顕著にそして即座に、質の向上が見られただけでなく、興行成績も上がったのだ。それまでパラマウントが製作していた予算をかけ過ぎの作品(『男の闘い』や『キャッチ22』など)から、突然『ローズマリーの赤ちゃん』のような作品を作るようになった。そのほかにも、『ある愛の詩』『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』 『ロンゲスト・ヤード』などだ。興行が芳しくなかった作品でさえ、魅力的なものだった。例えば『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』のように。
ハリウッドの基準から見れば、これらはすべて古代史のようなものだ。しかし、一考の価値のある例でもある。スタジオが最低基準に標準を合わせ始めたら、何が起こってもおかしくない。だが、結果は必ずしも悪い方向へ転ぶとは限らないのだ。少なくとも出来上がった作品に関しては。とはいえ、仕事の経費といった意味では、幾何学級数的だったかもしれない。
とまれ、やはり変化の面で見れば、まったくつかの間のことだった。8年間の素晴らしい業績の後、パラマウントのオフィスはまた荷物をまとめてスタジオに戻った。
あの頃のパラマウントを思い返すと、現在のハリウッドにはあれほどの強烈なムードを感じられない。今日の夢工場の工程は、広い意味でもっと複雑だ。大作の製作工場は、マーケティングやマーチャンダイジングも含め、一世代前の映画製作や配給とはまったく違うものになっている。
一方で、スタジオで働く面々は、最近、明らかに柔らかくなった。いまだ彼らは大企業の蚊帳の中で生活しているのだ。
しかし、会計士が動き始めたとなると、そういった居心地のいい蚊帳も、途端にグラつき始めるだろう。
ハリウッドの基準から見れば、これらはすべて古代史のようなものだ。しかし、一考の価値のある例でもある。スタジオが最低基準に標準を合わせ始めたら、何が起こってもおかしくない。だが、結果は必ずしも悪い方向へ転ぶとは限らないのだ。少なくとも出来上がった作品に関しては。とはいえ、仕事の経費といった意味では、幾何学級数的だったかもしれない。
とまれ、やはり変化の面で見れば、まったくつかの間のことだった。8年間の素晴らしい業績の後、パラマウントのオフィスはまた荷物をまとめてスタジオに戻った。
あの頃のパラマウントを思い返すと、現在のハリウッドにはあれほどの強烈なムードを感じられない。今日の夢工場の工程は、広い意味でもっと複雑だ。大作の製作工場は、マーケティングやマーチャンダイジングも含め、一世代前の映画製作や配給とはまったく違うものになっている。
一方で、スタジオで働く面々は、最近、明らかに柔らかくなった。いまだ彼らは大企業の蚊帳の中で生活しているのだ。
しかし、会計士が動き始めたとなると、そういった居心地のいい蚊帳も、途端にグラつき始めるだろう。
























